「そして誰もいなくなった」.アガサ・クリスティーが書いた推理小説ですね.幼いころに読みました.この内容には直接関係はないのですが,人口問題について.
「約115万人」
これは,山形県社会的移動人口調査結果報告書によって報告された2012年10月1日時点で山形県に住む人口の数です.(http://www.pref.yamagata.jp/ou/kikakushinko/020052/tokei/jinko_H23nenpo.html)
「約84万人」
これは,国立社会保障.人口問題研究所の将来推計人口・世帯数の調査によって出された2040年時点で山形県に住んでいるであろう人口の推計です.
(http://www.ipss.go.jp/ppshicyoson/j/shicyoson13/2gaiyo_hyo/gaiyo.asp)
人口減少により,過疎化はより一層進みます.
これまで,日本では1970年以降,過疎法を中心に過疎対策が行われてきました.
↓
過疎対策緊急措置法
過疎地域振興特別措置法
過疎地域活性化特別措置法
過疎地域自立促進特別措置法
過疎地域自立促進特別措置法(延長法)
どれもこれも似たような名前ですが,結果として人口減少にうまく対処することができていないのは,明らかだと思います.
恥ずかしながら,2013年春に山形大学に赴任するまで僕は大阪に住んでいたため,人口減少の深刻さを自分自身の問題として実感することができていませんでせした.
「人口問題を解決することは重要だ」
そんな事はもちろん分かっていましたし,人口推移を知らなかったわけでもありません.でも,具体的にそれが人間の生活環境だけでなく,人間そのものにどのような影響を与えるのか,理解していませんでした.
山形大学で「フィールドワーク共生の森もがみ(http://www.yamagata-u.ac.jp/gakumu/yam/about/index.html)」に携わるようになってから,過疎化した地域に住む人々の苦悩や毎日との戦いを,「物語(narrative)」として聞かせて頂く事が多くあります.個別具体的なエピソードと共に語られる物語は,先行研究で知った事をよりAuthentic(真正)な課題へと変えてくれました.
我々が,社会問題を認知する方法はたくさんあります.マスメディアを媒介することもありますし,直接現地を訪問する方法もあります.
人がもつ固有の「物語」を聞くという行為は,時として社会問題を鮮明に伝えてくれます.ツアーで問題のある地域を見る事もとても大事な事なのですが,「物語」を聞くこともとても有効な手段だと思います.もちろんそのためには人間関係もある程度必要になりますし,時間も必要になるでしょう.
しかし,社会問題はそもそも簡単に理解・解決できるものでもありません.じっくりと時間をかけて「物語」に耳を傾ける.
そういったことから始めることも,大切なのかもしれません.
いつか,「そして誰もいなくなった」な状態にならないためにも,是非我々が考えていくべき問題だと思います.